KLでの自由な生活

会社から開放され、時間をすべて自分のものにできるということは、特に何かやりたかったわけではありませんが、長い間のあこがれでした。引退前の数年間は「引退後は自由な時間が持てるのだからあと暫くは我慢しよう。」という意識でした。


引退については人によって様々な思いがあると思います。


「社会的な立場がなくなってしまう。会社の名刺も持てなくなってしまう。」と悲観的に考える人もいることとは思います。私の場合は全くそうは考えませんでした。これからは自分の思うままに時間を使えるという喜びの感覚でした。何時まで寝ていてもいいし、何時まで起きていてもいい。明日のことは全く考えなくていい。こんなに楽でうれしいことはありません。


そうは言っても、安きに流れる生活を送っていては、生きていく意味まで失われていくようでもあり、自分で目標を設定しそれに向かって努力していくという意識は生きていくうえで必要だと思います。


設定すべき目標自体を自分で自由に決められる、また目標を達成すべき期限さえも自分で決められる、ということ、ここが大事なことです。


やはりルーティン(毎日考えることなしに、決まった行動をとること)のようなものを決めないと、「毎日が日曜日」でだらだらと過ごしてしまいがちになります。


私が「ルーティン」としたのは、ウィーク デイは毎日ゴルフ場に行くことでした。


会員となっているゴルフ場ではウィークデーの朝はプレー可能な時間から8時ぐらいまで、ウォーキング ゴルフができ、スタートを待つ列ができていました。適当に組を作って、3人または4人でスタートしていくのですが、毎回大体同じ顔ぶれになり、自然に顔見知りになります。なかでも特に親しくなったのは台湾出身の夫婦でした。ご主人は、そのときはもう引退されていましたが、以前は建設デザインを仕事にしていて、どこそこの地域は自分がデザインしたとか言って自慢げに話していました。彼らは“ロイヤル スランゴール クラブ”というソシアル クラブ(ロイヤル スランゴール ゴルフ クラブRSGCとは全く関係ありません)の会員でもあり、ゴルフ場の隣にもクラブの建物があって、ゴルフが終わった後で誘われてそこで朝食を採るのが常でした。チャイニーズ ニュー イヤーにはカードを贈ってくれたり、息子さんの結婚式に呼ばれたり、親しくお付き合いさせていただいていましたが、ウォーキング ゴルフがゴルフ場の方針で取りやめになり、以後数回、予約して(ウィーク デーでも予約をしないとプレーできないシステムになっており、いい時間帯の予約を取るのは一種の競争でした。)バギーで一緒に回ったりしていましたが、ご主人はガンの摘出手術を以前に受けており、そのせいかどうかはわかりませんが、私が日本滞在中に亡くなってしまい、葬儀にも出られませんでした。


その後、私はKL郊外のテンプラーにあったプランサン テンプラー ゴルフクラブにも入会し、そこでも毎朝、ウォーキング ゴルフをやっていました。こちらのほうはウォーキングをやっている人の人数はずっと少なく、到着したらすぐプレーできるという状態でした。難点はゴルフ場まで30分もかかり、(KLGCCの場合は行くまで10分という近さでした。)帰りがKLに向かっていくことになるため、渋滞に遭遇するということでした。客の数を確保できなかったためでしょうか、プランサンはSPセティアという開発業者に売却されることになり、やがて閉鎖されてしまいました。購入した会員権は使用した期間を割り引いて、支払った金額は返却されました。(日本でゴルフ場が民事再生法適用などで倒産すると、会員権の払い戻しがまず受けられないのとは対照的です。)KLでの自由になった6年間はゴルフが中心の生活でした。KLのコンドは6年間引っ越さずに、同じコンドに住み続けたのですが、家賃の改定がその間1回あり、当初から10%ぐらい上がっていました。昨年12月に同条件での延長を申し出たところ、今回オーナーから更に10%の値上げしたいとの通告があり、引っ越すことに決めました。引っ越すことを伝えると、「同じ家賃でもいいから継続してくれないか?」と言ってきましたが、既に次の住処を探していたこともあり、お断りしました。今年3月に次の住処を契約し、4月から移動することにしたのですが、4月には日本に一時帰国することになっており、マレーシアに帰ってこれる8月初旬まで、新しい住処は開けておかなければならない状態となりますが、荷物や車の保管の問題があり、4ヶ月ほどの家賃は無駄になりますが、やむをえないと判断しました。別の選択肢として荷物や車を一時保管できる業者に委託する方法も一応考えましたが、その場合、もう一回荷物の移動をしなければならず、委託料金もかかる事から、空き家にすることを選択しました。移動先として選んだのはイポーでした。イポーには下見目的以外にも観光として何回か来ていましたが、下見して、ゴルフ環境として問題ない先であると判断して転居先として決めました。実際にイポーにすみ始めたのは8月7日からですが、イポーはどんな街なのか、KLと比べてどうなのかについて、次回触れてみたいと思います。

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