国王はムヒディンを次期首相に指名

マレーシア国王は第8代首相としてムヒディンを指名したというニュースを紹介します。記事原文は次のURLを参照してください。
https://www.thesundaily.my/local/agong-appoints-muhyiddin-as-8th-pm-YF2061067



Quote


“第8代首相として国王はムヒディンを指名”


1週間にわたる政治的難局を経て、国王はタン スリ ムヒディンをマレーシアの新しい首相に指名しました。


これは国王の執事の声明により2月29日に確認されました。



国王は、すべての政党のリーダーに第8代マレーシア首相として誰を押すかを聞いた後で、これは出されたものです。


その声明によると、「政党のリーダー全員と独立派議員は、だれを首相として推すかを国王は聞かれました。


みんなの意見を聞いた後、国王の意見では議員の多数を得そうなのはムヒディンだということでした。それで、連邦憲法40条2項aに沿って、国王はムヒディンを首相に指名しました。」とのことです。


Unquote


この経緯には手続き上の欠陥があります。国王は内閣の助言と承認の下で首相を指名できる権限があるだけで、自ら議員の意見を聞いてその集約をする権限などありません。余計なことをしただけです。首相を指名するためには内閣の助言と承認がなければならず、それなしになされた政治行為は違憲です。


しかしそれを言える議員はマレーシアには恐らくいないでしょう。下手すると反逆罪、不敬罪になりかねませんから。


3月9日に、議会で正式に首班指名手続きが行われるようですが、その選挙結果がどうなるか見ものです。


もともとマハティールを担いだPPBMは腐敗したナジブ率いるUMNOを飛び出した人たちで構成されていたのに、今度はそのUMNOと一緒になって政権を担うというのは筋が通りません。


現実の首班指名選挙がどういう結果をもたらすのか、PPBMは一枚岩なのか、それとも意見がわれるのか、本当に見ものです。PKRから飛び出した(除名された?)11名はどういう行動をするのか、依然として混とんとしています。ムヒディンが首班指名されたとしても、不信任動議が出された場合、(事実そのようなことになる可能性に言及している議員もいます)各議員はどういう行動をとるのか、下手な小説よりも面白い展開になりそうです。

ムヒディンが最有力か?

首班指名をかけて、2月28日にUmnoを中心とするグループとこれに対抗するPH(希望連盟)のPKR39名DAP42名、AMANAH11名の合計92名がわきを固めるための会議を開催しています。Umnoを中とするグループにはUmno、PASの連盟とその他のBN(国民戦線)を構成していたMCA(マレーシア中華協会)2名、MIC(マレーシア インド会議)1名も賛同しています。


Umnoを中心とするグループに関する記事を紹介します。記事原文は次のURLを参照してください。https://www.thesundaily.my/local/muafakat-barisan-nasional-endorses-muhyiddin-yassin-as-pm-HK2059867




Quote


“MUAFAKAT、BNは首相にPPBM総裁のムヒディンを首相に推挙”


UMNOとPASで構成されるMUAFAKAT NASIONAL(がんばれ党?)はPPBM総裁のタン スリ ムヒディン ヤシンを首相に推挙します。


先に、UMNOとPASは2月23日の政治的展開以来、政治的混乱を解決するため総選挙を主張してきましたが、上記の結論となりました。


UMNOとPASによってサインされた協定によると、国王の参考として、ムヒディンを首相に推挙するとなっています。


UMNO39名、PAS18名からなる57名は、先にPPBMの36名がムヒディンを首相に推挙することをうけて、ムヒディンを首相として支持することになりました。


BNもムヒディンを首相に推挙する声明を出しました。MCA2名とMIC1名を加えて96名の議員がムヒディンを支持していることになります。これ数字はPKR総裁のアンワールを支持するPHの92名を凌駕することになります。


政府を形成するどの勢力に加わるかはサバとサラワク次第ということになりました。


Unquote


アンワール勢力とムヒディン勢力の差は92対97とわずか5人の差です。102人の過半数獲得を巡って熾烈な戦いが始まっています。アンワール勢力が過半数を獲得するにはあと10名、ムヒディン勢力はあと5人獲得しなければなりません。


色がついていないのはPKRを除名された11名、サラワク連合の18名、その他6名といったところでしょうか。


アンワールは敗色濃厚となっています。


しかし、未確認情報としてムヒディンは体調は今一つで、病院通いが続いており、首相の激務には耐えられないのではないかという話も出ており、首相になったとしても短期で後退を余儀なくされるのではないか?とか腐敗しきったUMNOが加わって政権を担当させるのかと?といった疑問符もつけられており、いずれにしても政治状況は混とんとしています。


ムヒディン政権となればマレー色が強まり、中国人は排除されることになると予想されます。

3月2日(月)に臨時議会で首班指名へ

「政府がなくなってしまった。」自国の現状を轅いてマレーシア人が自嘲気味に話します。


汚職と内部対立に明け暮れ、自身の利益を追求する輩ばかりだと評するのは酷でしょうか。


マハティールが暫定首相の指名を受け、各省庁のトップはすべて辞任し、現在はトップ不在の状況になっています。


3月2日(月)に臨時議会が招集され、そこで首班指名が決定されるようです。


現在の議会222名の政党別構成は次のようになっています。


PH(希望連合)
・PKR      39名
・DAP      42名
・AMANAH    11名
合計       92名


マハティール支持派
・PPBM      26名
・WARISAN    9名
・サラワク政党連合 18名
・その他       1名
合計        54名


BN(マレー統一戦線)
UMNO           39名
その他         3名
合計         42名


PAS          18名 (現在BNと連合)


その他          4名
無所属          12名
合計           16名


以上の通り、圧倒的な多数の政党がないので、話し合いによって首班指名を行うということになるか、または話し合いで決着がつかなければ、総選挙を実施する以外ないことになります。総選挙を実施することになれば、各政党が政権を担当する基本政策を一致させて、連合を組んで選挙民に訴えるということになるのですが、先行きは不透明なままです。


マレーシアの政治的混乱で、マレーシアの国債の格付けに引き下げ圧力がかかってきています。現在はS&P、ムーディーズなど各格付け会社とも“安定的”という評価ですが、混乱が長引けば、格付けの引き下げが実施され、為替にも影響が及ぶと考えられます。また経済成長率は4.2%が予想されていますが、この達成にも黄色信号がともる可能性もあります。

マレーシアの次期首相はだれに?

マレーシアの政治状況が混とんとする中で、暫定首相に指名されたマハティールに空白となった内閣の組閣が委ねられています。組閣の完了後、マハティールは退任することになると思われます。


国王が全議員にインタビューし、各議員の考えを聴取しています。


憲法上、君臨すれども統治せずという立場である国王に政治に介入する権限が与えられているのか議論があるところだと思いますが、実際は国王がそのような動きをしています。


さらに次の内閣の首班について党派ごとの動きが活発に行われています。


目立った動きとしては、議員総数222名中93名で構成される、26名のPPBMが抜けた希望連盟PH(DAP,PKR、AMANAH)がアンワールを次期首相候補とすることを表明し、その他の政党は首相候補については言及していません。BNは総選挙を主張しています。


PKRから離脱した11名はPPBMに参加するという情報もあり、またPPBMが希望連盟PHに再加入するという情報もあり、結局はPHが過半数を確保して、支配政党グループになるという可能性が出てきました。


そうなれば、マハティールの思惑とは異なり、結局はアンワールが第8代のマレーシア首相になるということになりそうですが、結果は近々判明することになるでしょう。PPBMの動向次第で、総選挙の可能性もまだ残されてはいます。

マハティール辞任に伴う野党の動き

2月24日のマハティールの首相辞任騒動を受け、各政党が様々な動きを展開しています。その現在、野に下っているBN(UMNO、MCA、)とPASの動きを紹介します。記事原文は次のURLを参照してください。https://www.thestar.com.my/news/nation/2020/02/25/barisan-national-pas-call-for-dissolution-of-parliament-fresh-elections


Quote


“BNとPAS:議会の解散と総選挙を”


両党は現在の政治的不確実性ゆえに、議会を解散し、総選挙の実施を求めています。


UMNOの幹事長は「信任を人々に返すべきだ。人々の主信任を蔑にはできない。国王が議会を解散することを求めたい。国王臨席の場で、我々BN、PAS、PBRS(サバ人民連合党)は全員一致して、議会の解散を求めました。国の将来を決めるため、人々の新しい信任が必要です。新しい政府を形成するにあたって、新しい考えは人々の将来を賭けることです。国の安定にあたって、どんな遅れでも大きな代償を払わなければならなくなる。人々の利益が優先されなければならない。マハティールが提案する統一政府は受け入れられない。新しい連合のどんな提案であれ、DAPは排除しなければならない。彼らはドクター マハティールを支持した法定宣言を撤回してしまいました。なぜなら、それはDAPなしの新しい政府だったからです。」


MCA総裁は次のように語っています。「先に開かれた党の最高委員会で、全員一位で決定権を人々に返すことを決定した。したがって今後の一番いい道は議会を解散し、総選挙を行うことだ。政治危機はその崩壊に至ったPH(希望連盟)の自傷だ。我々は人々に向き合い、我々の業績を判断してもらおう。我々が優先すべきは、国が安定を享受するのを支える強力な連合を求めることだ。」


Unquote


野党が議会解散と総選挙を求めるには、それなくして権力にありつけないから当然の動きですが、今の少数野党の状態では安定した政権は形成できず、早晩総選挙が日程に上ってくるのは不可避だと思われます。


PASについては先のことは分りませんが、BNと当面連合している状態です。


BNを構成するMCAとDAPは同じ中国人グループなので、中国人の票を取り合って、激しく対立しています。