マレーシアにおける死刑廃止問題

マレーシアでは死刑廃止問題について、今度の議会で話し合われることになっているようです。


これに対して、マレー ムスリム のNGOのUmmahが強烈な反対の姿勢を崩していません。この件に関する記事を紹介します。記事原文は下記URLを参照してください。
https://www.thestar.com.my/news/nation/2019/02/12/ummah-threatens-to-march-if-govt-goes-ahead-with-death-penalty-abolition/#bZjyZHVxagB2tLwu.99



Quote
“政府が死刑廃止を進めるならば、反対運動を展開する”


Ummahの書記局長は、2月12日に、来る3月の議会における政府の死刑廃止計画に付いての座談会の後の記者会見で語っています。


「もし政府が、死刑廃止に反対する、年代を超えたマレーシア人の声を無視するならば、大規模な抵抗が起きるに違いない。昨年の12月に、ダタラン ムルデカで起きた、人種差別反対の人数を超える可能性がある。


当局が何もしないならば、あるいは我々の提案を無視するならば、我々はデモを組織し、その規模は、少なく見ても、人種差別反対デモの規模を上回ることになるだろう。再び、歴史的なものになるだろう。


これは社会全体に影響する基本的な問題だ。死刑廃止は、愚かな大臣による、愚かな提案だ。だから、我々は政治信条、人種に関わらず、全ての人に、それを止めさせるために力を貸してほしいと訴えている。


大臣は愚かなだけでなく、議員に対しても脅しをかけてきている。私を引き合いに出し、私を訴えさせろ。」


2月10日に事実上の法務大臣は


「来る3月の議会で死刑廃止に反対した、与党議員は懲戒に直面することになる。」と語っています。


現在、約1,200人が、殺人、誘拐、麻薬取引などの罪で、死刑執行待ちの状態です。


以前、法務大臣は、前の警察長官の意見を踏まえ、憲法に国民投票に関する規定はないと発言しています。


記者会見に同席した弁護士は、民主主義の原則から見て、国民投票をしないという決定は間違いだと次のように語っています。


「国民投票実施を政府に求める記者会見を2回開いた。しかし、一般の意見は勘定に入れないので、国民投票は実施しないということだった。マレーシアは民主主義の原則に基づいているので、これは間違っている。一般の意見、または利益に従わないならば民主主義に反する。


さらに、国際統計によれば、死刑が廃止されると犯罪率は上がっています。ベネズエラ、メキシコ、英国を見てください。これらの国は、みんな死刑を廃止しました。犯罪率は125%上昇し、殺人は2倍になっています。これは議会で言及されました。確かめてください。」


前警察長官も会見に出席していて、死刑廃止反対に賛成して、次のように述べています。


「犠牲者に対する凶悪な犯罪を多く見てきたので、死刑は科されるべきだ。死刑を維持し、人々と国の安全を確保できる。」


次の議会は3月11日から4月11日までです。
Unquote



いくつか気づいたことに付いて述べてみます。


民主主義とはいえ、間接民主主義が取られているので、国民投票イコール民主主義とはいいがたい。


ベネズエラ、メキシコ、英国の犯罪率の増加原因は、各国の事情を考慮すべきで、短絡的に死刑廃止の影響とはいいがたい。


例えば、ベネズエラは石油価格の暴落で、経済が瀕死状態であるのと、インフラ整備で膨大な対外債務を抱えており、破産がささやかれている状況であり、英国は移民の大量引き受けで、社会的な混乱が発生している等々。


死刑が確定しているのに、1,200人も執行されないのは何故なのか?司法の判断に対して行政が死刑を執行しない権限を持つのはおかしいのではないか。


殺人や誘拐は確かに重大犯罪なので、死刑はやむなしと考えるも、たかが麻薬取引で死刑とは厳しすぎる気がする。麻薬による犠牲者を考えてのことなのだろうか。しかし、直接的な被害が出ているわけではない。抑止力を期待してのことだろうか。


自力救済が今の社会では認められていないので、国家が犠牲者に代わって報復するのは理にかなっている。死刑を廃止するならば、自力救済を認めないと、誰が犠牲者の無念を晴らすのだろうか。

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